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2025.06.24

過去に胃カメラ検査を受けたことがある方へ

院長の安藤です。先月から令和7年度の羽島郡笠松町の胃がん検診が始まりました(羽島郡岐南町は来月から始まる予定のようです)。当院も胃カメラによる胃がん検診の実施医療機関ですので、検診対象者の方は、10月以降は混雑が予想されますので、お早めにお電話による予約をお願いします。

ところで、時々患者さんから「次の胃カメラはいつ頃するのがいいですか?」とか「前回の胃カメラは、もういつしたか覚えてないぐらい前です」といったお話を耳にします。そこで今回は定期の胃カメラ検査についてお話させて頂きます。

まず、過去に一度でも胃カメラ検査を経験された方の多くは、検査を通じて安心感を得られた反面、どこかで「もう受けなくても大丈夫だろう」「異常がなかったのだから、しばらく様子を見ていて問題ない」と思ってしまいがちです。胃カメラは、胃や食道、十二指腸といった上部消化管の状態を直接観察できる非常に優れた検査です。しかしながら、胃カメラ検査は“受けること”がゴールではなく、“その後どう向き合うか”が大切だと考えています。

たとえば過去に胃カメラ検査を受けた際に下記のようなことはありませんでしたか?

・前回の検査結果で異常はありましたか?
・ピロリ菌の検査・除菌治療は実施しましたか?
・胃炎やポリープ、潰瘍などの所見はありませんでしたか?
・医師から「定期的な検査が必要」と言われませんでしたか?

これらのポイントは、再度胃カメラ検査を受けるうえで重要な判断材料となります。
胃がんなどの重篤な病気は、初期症状がほとんどありません。そのため、胃がんを予防するためには、定期検査が何よりも重要となります。

また現在、特に症状がなかったとしても、数年という月日が流れているならば、体の中では少しずつ変化が生じている可能性もあります。年齢、食生活、ストレス、生活習慣の影響は日々蓄積され、数年前とは異なる胃の状態を作り出していることもあります。過去に胃カメラ検査を受けたことがある方は「また胃カメラ検査を受けた方がいいのだろうか?」という問いが心の中に浮かんでいるのではないでしょうか。そんな時はぜひ定期的な検査を受けるようにしましょう。

胃カメラ検査の再検査時期は、「全く異常がなかった方」と「何らかの所見があった方」とでは異なります。以下におおまかな目安を示しますが、最終的な判断は医師との相談で決めることが重要です。

➀ 胃に異常なし/ピロリ菌陰性だった方
胃カメラを受けたあの日から、どれくらいの時間が経ちましたか?まずは前回胃カメラ検査を受けた時期を確認してみましょう。数ヶ月前だった方もいれば、3年、5年と時間が経っている方もいらっしゃるかもしれません。検査後、異常がなかったという結果に安心し、そのまま再検査を受けていないという方は少なくありません。しかし、胃や食道、十二指腸といった臓器は、一見症状がないように思えても、実は目に見えない変化が緩やかに進んでいる場合もあります。そのため、3年に1回は胃カメラ検査を受けることをお勧めしております。
日本では、胃がんの発症率が高く、年間でおよそ10万人以上が新たに胃がんと診断されています。胃がんの多くが、初期の段階では症状がほとんど現れないため、早期発見を逃してしまうケースも少なくありません。前回の検査時に異常がなかったからといって、それが“ずっと安心”という保証にはなりませんので、定期検査を受けるようにしましょう。

➁ 慢性胃炎があった方/ピロリ菌陽性だった方
過去の胃カメラ検査時に、軽度の慢性胃炎があった方やピロリ菌陽性だった方は、必ず1年に1回は検査を受けるようにしましょう。特にピロリ菌感染があった場合、除菌後も胃がんリスクがゼロになるわけではありません。胃がんなどを初め、体の中で静かに進行していく疾患ほど、定期的なモニタリングが重要となります。以前はなかったびらんが出現したり、慢性胃炎の範囲が広がっているかもしれません。そのため、過去の検査で軽度の慢性胃炎があった方やピロリ菌陽性だった方は毎年胃カメラ検査を受けるようにしましょう。
また過去にピロリ菌陽性と言われ、除菌が成功した方も多いかもしれません。確かに、ピロリ菌の除菌は胃がんの発生リスクを大きく下げるとされており、医学的にも意義のある治療です。しかし、ピロリ除菌後であっても、すでに萎縮性胃炎や腸上皮化生といった前がん病変が形成されていた場合、胃がんリスクはゼロにはなりません。そのため、除菌後も1年に1回のペースで胃カメラによる経過観察が重要だと考えています。

さらに前回の胃カメラ検査から数年経っている方で、以下のような症状や変化がある方は、早めの胃カメラ検査をおすすめします。

・食後の胃もたれやむかつきが続く
・胸やけや喉の違和感がある
・食欲不振や体重減少がみられる
・貧血を指摘されたことがある
・便が黒っぽくなっている
・ストレスや加齢で胃の調子が不安定になってきた

特に50歳以上の方は、無症状でも定期的な検査が胃がんの早期発見に繋がります。「今、何も不調を感じていないから大丈夫」と考えるのは、ごく自然な感覚です。しかし、実際には「症状が出る頃にはすでに進行している」場合も少なくありません。胃がん、特に早期胃がんの多くは、まったく自覚症状がないまま進行していきます。胃痛、食欲不振、体重減少といった分かりやすい症状が現れる頃には、すでに進行期に入っているケースも多く、治療の選択肢も限られてしまうことがあります。胃がんに限らず、慢性胃炎や逆流性食道炎といった病気も、ある日突然できるものではなく、長い時間をかけて悪化していきます。だからこそ、「何もないとき」にこそ、検査を受ける意義があります。自分では気づかない小さな変化を見つけ出し、それを放置せずに向き合っていくことで、病気の芽を早期に摘み取ることができます。

ただ過去に胃カメラを経験された方の中には、その時の苦痛の記憶が強く残っており、「もう二度と受けたくない」と感じている方もいるかもしれません。特に嘔吐反射が強かった方や、検査中に強い不快感を感じた方にとって、胃カメラ検査は避けたい医療体験のひとつかもしれません。しかし、近年では内視鏡機器の進歩により、以前と比べて格段に楽に受けられるようになっています。細径のスコープを使用した経鼻内視鏡や、鎮静剤を用いてウトウトとした状態で検査を受ける鎮静内視鏡の導入によって、「気づいたら終わっていた」「全く苦痛を感じなかった」という声も増えてきています。
過去に受けた胃カメラが「苦しかった」と感じたのは、当時の技術や設備の問題だったのかもしれません。今はその印象を払拭するチャンスが十分にあります。少しでも不安がある場合は、医師に相談し、ご自身に合った方法を提案してもらうことをおすすめします。

また胃の健康を守るために、日常生活の中でご自身でできることもあります。検査の有無にかかわらず、日々の生活習慣が胃に与える影響は決して小さくありません。油っこい食事やアルコールの多飲、喫煙、睡眠不足、ストレス過多といった生活習慣は、胃粘膜の炎症や胃酸の過剰分泌を引き起こし、胃のトラブルの原因となります。また、加齢とともに胃の働きは徐々に低下していきます。若い頃と同じような食生活を続けていると、知らず知らずのうちに胃に負担をかけてしまうことがあります。夜遅い時間の食事や、満腹になるまで食べる習慣、あるいは刺激物を好む食生活など、思い当たることがあれば、少しずつ見直していくことが大切です。

そして最後になりますが、胃カメラ経験者の方こそ定期フォローが大切です。一度胃カメラ検査を経験した方であれば、ご自身の体調の変化にも敏感なはずです。「最近なんとなく胃が重い」「食欲が以前より落ちたような気がする」そんなささいな変化を感じたときこそ、もう一度胃の状態を確認するタイミングなのかもしれません。一度の検査で安心して終わるのではなく、その安心を継続的な健康維持へと繋げる行動こそが、ご自身の未来をより良いものにしていく鍵となります。過去の胃カメラ検査を「終わったこと」とせず、今の自分を知る機会として、そしてこれからの人生を健やかに過ごすためのきっかけとして、もう一度、胃の健康と向き合ってみましょう。